メディア掲載
オルガテック東京2023 開催!
ストーリーのあるワークプレイスの提案
コンフォルト 192号 2023年 8月号
ワークプレイスをめぐるトレードショー「オルガテック東京2023」が4月26日から28日、東京ビッグサイトで開催された。第2回のテーマは「SHIFT DESIGN~デザインは働き方を自由にする」。
ワークプレイスをめぐるトレードショー「オルガテック東京2023」が4月26日から28日、東京ビッグサイトで開催された。第2回のテーマは「SHIFT DESIGN~デザインは働き方を自由にする」。
オルガテックは、ドイツ・ケルンでオフィス設備に特化してはじまり、隔年開催で既に70年の歴史をもつ世界最大規模の見本市である。初のサテライトイベントとして昨年開催されたオルガテック東京は、コロナ禍だったにもかかわらず、国内47社、海外16社が出展し、3日間で2万1958人の来場があった。
そしてコロナ規制の緩和された今年、会場面積は倍になり、出展企業も国内82社、海外45社と倍増。来場者は2万6212人を数えた。前の週にミラノサローネが開催されたばかりにしては予想以上の来場者数で、両方に出展した企業、足を運んだ来場者も多い。前回でこのトレードショーへの認知が高まったのだろう。
出展企業が工夫を凝らし働く場をめぐる思想を提案
主催のケルンメッセでアジア太平洋地域を統括するマティアス・キュパーさんは、「今回も来場者の多さに驚いています。出展内容やセミナーも充実しました。昨年は、パンデミック下での在宅ワークが主なテーマでしたが、今年は未来に向けたシフトデザインへの動きが出てきました」と話す。
コロナが収束しても、大きく変わったワークスタイルは元には戻らないだろうとキュパーさんは言う。自身も以前は1日12時間近くもオフィスにいたが、「今はどこにいても私のオフィスはスマホ1台(笑)」。
生活、仕事、アウトドアのボーダーがなくなったのは世界的な傾向。しかし、共に仕事をする上で顔を合わせて交流することも重要だ。
「オフィスには各自が働くだけでなく、人が集う場としての意味が求められています。その面で今回、単にプロダクツを見せるのではなく、ストーリーを語ることで人を惹きつける提案がなされているブースが多くあったことに感動しました」
確かに。伝えたいことを絞り込んだ展示は多数見られた。製品を並べるよりも、これからのワークプレイスのあり方への思想を見せると言ったらよいだろうか。ブースデザインを評価する「ベスト プレゼンテーション アワード」でグランプリを受賞したコクヨは、スツールなどの製品のパーツと木材を組み合わせた家具づくりの取り組みなどを紹介した。パーティションメーカーのコマニーの、オーガンジーのカーテン数枚を自動で動かして、人との距離感や空間の感じ方の変化を実感させた体験型の展示にも、キュパーさんは大いに関心を持ったそうだ。
さまざまな他業種企業も働く空間づくりに参入
ケルンメッセと共に開催を担う日本オフィス家具協会(JOIFA)専務理事の貫名英一さんは、ワークプレイスのデザインの領域が、大きく広がっていると感じている。 「出展127企業中JOIFA会員は40社。あとは当協会会員以外の企業です。屋外用家具、トレーニング機器、インドアグリーンなどさまざまな業種が参入しています。今回は面積が広くなったにもかかわらず、希望の広さが確保できないため、出展を断念した会社もありました」
傾向としては、サステナブルとウェルビーイングはいまや当然の前提で、ことさらに言うことではなくなった。その上でどんな独自の提案ができるかが問われている。一つひとつの説明を読んで初めて、リサイクル素材や地域の間伐材を使っていると知る展示も数多くあった。木材はかなり目につく。スチール家具メーカーも積極的に国産木材を取り入れていくのはひとつの流れだろう。
「前回同様、来場者の会場滞在時間が非常に長い。見るだけでなく各ブースで深く対話していました。今回、会期中の2日間、17時以降をオルガテックナイトとし、エクスペリエンスエリアや各ブースでアルコールとフィンガーフードを提供。プロによる楽器の演奏も。くつろいだ雰囲気で歓談を楽しんでもらえました」
ワインやビールを片手に話す時間。リモートワークに慣れた現在だからこそ、集うひとときの大切さが伝わる試みともいえる。
今回の展示には、オフィス空間を多く手がけるインテリアデザイナー吉田裕美佳さん(FLOOAT, Inc.)も注目していた。
「オフィスはパブリックな空間として認識され、もっと豊かであるべき。一人ひとりにとって快適な場であれば、オフィス回帰への流れも進むでしょう。今後は学生が考える未来のオフィスなんていう展示もあると面白いですよね」
吉田裕美佳さんと歩くオルガテック東京2023
吉田さんは今の働き方に寄り添い、誰もが心地よく過ごせるオフィス空間を現出している。設備や家具にアンテナを張り続ける吉田さんには、出展ブースの多くが旧知の企業だ。その新しい提案をどのように見るか? 会期中の1日、一緒に会場を歩いていただき、感想をうかがった。
- CITTERIO(チッテリオ)
- 「CSS VILLEGE」シリーズのパーティションで構成した大小の部屋。「本来、表に出てきてしまう構造部分を見せないように細部まで工夫されており、きれいなデザインでした。12㎜厚の合わせガラスを使って遮音性も非常に優れています」。[秀光]
- Feltouch、Deberenn
(フェルタッチ、デベレン) - トルコの吸音パネルと家具メーカーの2社によるコラボ出展。リモートワーク増を受けて吸音素材を出す企業は多いが、「柔らかいデザインで色もしっとりとしています。壁や天井に簡単に取り付けられるし、立体的なパーティション(左)は一部に麻を使っていてプロトタイプとのことでしたがとてもよいです」。
[イノベイジア]
- 大地農園
- 60年前から国産の植物を独自技術でドライに加工している会社だ。樹木の葉やハーブ、花を空間の彩りに配置することを提案する。
「植物それぞれの香りも感じられますし、共用スペースなどに使えそう」。
- & MEDICAL
(アンドメディカル) - バランスボールである。けれど一般に見るものより小さく、スツールのよう。「MALLOW」は&MEDICALというプロダクトブランドの製品で、理学療法士の知見を取り入れている。「インテリアとしても優れた機能的なデザインで、いろんな場所で使えそうです」。
[ドリーム]
- by interiors
(バイインテリアズ) - 目を引いたのが、大城健作デザイン「SWEEPY」シリーズの大テーブルとペーパーコードのベンチ(右列手前)だ。
「ベンチスタイルは私もよく提案します。人の距離が近づくし、横に荷物を置くにもいい。これはとてもきれいです」。[インテリアズ]
- カリモク家具
- 「さまざまなプロダクトを通して、カリモク家具の技術力の高さを感じます。スタイリングを取り入れた提案も素敵でした」。6つに分けたエリアでは高い加工技術やアーティストたちとのコラボも見せる。夕刻からは来場者が軽食とドリンクを手に語り合う姿も。