インテリア トレンドレポート
Vol.3 東京、上海で活躍する建築家、
昭和住宅がオフィスの理由
近年のオフィス空間は、デザイナーや建築家の仕事のスタイルが表現される場所でもあります。東京事務所の雰囲気を感じるいくつかの仕事を見せてもらいました。
小大設計事務所は、地元の感覚や工芸的な手法を重視する、ローカライズアーキテクチャーともよべる手法で多くの建築を生み出してきました。
中国陕西省の集落で手掛けたリゾートホテル「鹿柴山集ホテル望木」は、石垣を積みあげた段々畑のある土地をリゾートとして開発してほしい。そんな依頼からはじまったそうです。
急に異質な建築を建てるようなことはせず、地元の街並みを生かし、昔ながらの民家のようなコテージが立ち並ぶリゾートです。そこには「広場」「目的を決め込まない場所(間)」をところどころに設けることを心がけて設計しています。それは東京オフィスの畳の間にも通じる、息の抜ける場所です。
コテージの合間には路地やちょっと腰掛ける場所、階段などがあり、旅人が出会い、ふとした会話が始まる場所を設けています。
コテージの室内も小大設計事務所でデザインしたオリジナル家具が中心で、デイベッドともベンチともいえない、用途を限定しない家具が、くつろぎの場所を生み出しています。
下は仙台の奥座敷と呼ばれる温泉街の「星野リゾート 界 秋保」の客室です。どこか「一畳十間」の空気感をまとっています。写真左側には仙台有数の美しい渓谷や川が眺められる窓があり、そこに造り付けのベンチコーナーを設け、小さな部屋のように過ごせます。家具とも部屋とも言える場所。こういう曖昧な場所は、先入観にとらわれず、さまざまな過ごし方を観察してきた二人だから発想できる場所でしょう。
小大建築事務所は東京18名、上海12名とスタッフも増え、ますます勢いを増す建築事務所となりました。伸也さんは中国で、綾香さんはアメリカで、国外で学び働いた経験もあります。異文化で暮らす苦労も重ね、たどり着いたのが、日本の民家をリノベーションしたオフィス。そこからさらなるグローバルな建築が生まれているのです。
小大設計建築事務所/建築家・小嶋伸也、小嶋綾香が主宰する東京・上海を拠点とする設計事務所。二拠点での設計活動から、グローバルな視点で固定概念に捉われない独自的な建築を発想する。小さなローカルなものからでも、集う場所を作り持続的で大きく確かな経済性を生み出すような設計を心がける。日本の心地良い美がある暮らし」をテーマにしたリノベーションブランド「一畳十間」の運営も注目されている。
photo credit.:堀越圭晋/SS(建築作品の写真すべて)
レポート:本間美紀/ライフスタイルジャーナリスト
インテリアの専門誌「室内」編集部を経て、独立。家具、インテリア、デザイン、住まい、キッチンなどの取材執筆、セミナーなどを手掛ける。ドイツ、イタリアなど海外取材も多数。著書に「リアルキッチン&インテリア」「リアルリビング&インテリア」「人生を変えるインテリアキッチン」(小学館)など。