インテリア トレンドレポート

Vol.5 家具・インテリア用品にみるサステナブル対応の最前線

釉薬を使わず原料に鉄粉を混ぜ込み生まれる磁器、マットで濃淡ある新たな表情

磁器は、高い技術を持つ窯元でも1割ほどの生産ロスが発生する。焼成時に鉄粉による黒い点や、釉薬の気泡によるピンホールができてしまうことをゼロにすることは難しいためだ。この問題に新しい発想で素材開発から取り組んだのが肥前吉田焼のブランド「精成舎」だ。

新素材である陶土「晟土(せいど)」は、あらかじめ鉄粉を練り込むことで、その表情を特徴としてしまうという逆転の発想。そして、長石などを混ぜることによって、釉薬をかけなくても汚れが付かない仕様を実現した。こうして生産ロスを生む2つの要因を排除することで、生産ロス率を1%程度に抑制している。また、一般の磁器と比べて強度は1.5倍となり、釉薬をかけないので焼成回数が少なく排出する二酸化炭素量は6割程度で済むという。

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この素材を世に問う第一弾の製品として、新生活に向けたシンプルな食器を2023年に発表した。デザインはオフィスや家庭向け家具、生活用品などのデザインを手掛ける世界中にクライアントを持つプロダクトデザイナーの安積伸氏。

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「素材のみならず、使いやすさやスタッキングにもこだわった商品となっている。家庭用としてだけでなく、飲食店からの注文も入ってきている」と精成舎を手掛ける株式会社224の辻諭氏は言う。