インテリア トレンドレポート

Vol.5 家具・インテリア用品にみるサステナブル対応の最前線

使用済コーヒーカプセルを原料にした棚

様々な場所で日々、飲まれているコーヒー。コーヒーメーカーにはいくつかの種類があるが、代表的な一つがコーヒーの粉を封入したカプセルを使ったものだ。ひき立ての鮮度を保てる、好みの味を選べるなどのメリットがある。このカプセルはプラスチックで作られていることが多い。

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使用後のカプセルおよび、出荷前の不良品のアップサイクルに取り組んでいるのがイタリアのilly(イリー)とKartell(カルテル)。イリーは老舗のエスプレッソブランド、カルテルは最先端の工業技術を使った家具で知られる。いずれも世界中で知られるイタリアを代表する企業だ。

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カルテルはそれらをイリーから提供を受け、粉砕し射出成型に適した粒状に加工、家具の素材として再利用している。この製造工程を完成させるまでにはおよそ2年かかったそうだ。
さまざまなカプセルの色を溶解するため、色には制限があるが、カルテルは椅子の張り地を樹脂に合わせ、アパレルのミッソーニのデザインを使いシックでエレガントな椅子に仕立て上げた。

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この取り組みによる最初の製品は2022年に発表され、2024年にはコンソールテーブル「A.I. console」が加わり話題となった。デザイナーはフィリップ・スタルク、世界で最も有名なデザイナーと言われる一人だ。A.I. consoleを含むA.I.シリーズは、フィリップ・スタルクの過去のデザインを学習した人工知能を用いてデザインするもので、強度を保ちながら最小限の素材利用も目指している。アップサイクル素材を用い、その利用量も最小限という、二方向からサステナブルに取り組んだ意欲的なものだ。

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大きな建築はもちろんのこと、家具から雑貨までこれからは形のデザインではなく、サステナブルな材料をいかに使うか。さらに魅力的なデザインや使いたくなるプロダクトにまで昇華させることが、インテリアの世界でも問われている。

レポート:山崎泰/ジャーナリスト(JDN 取締役)

デザインへの関心から丹青社に入社。1997年、社内新規事業であるデザイン情報サイト「Japan Design Net(JDN)」立ち上げに参画。「登竜門」「デザインのお仕事」を事業化し、コンテスト企画運営を手がける。編集長を経て現職。デザインに関する取材、トークや審査会のコーディネート等も行う。